ギャンブル好きで
息子を売ったクズ
初見では「ギャンブル好きで息子を売ったクズ」といった印象しかない伏黒甚爾。しかし、ストーリーが進むたびに評価を上げ続けていくのが伏黒甚爾。
初登場の過去編では、ギャンブルをしながら堕落した生活を送り、殺し屋を生業としていた。息子の名前すら忘れる状の薄さに加えて、女子中学生を銃殺するという冷徹さも併せ持つ。
五条悟に敗れ死亡した後、渋谷事変でオガミ婆の降霊術により復活を遂げる。天与呪縛のフィジカルギフテッドで暴れまわった後、息子の伏黒恵と対峙。最期は自決という選択をとった。
生粋のクズこと伏黒甚爾の生涯には、どんな裏があったのだろうか。今回はそちらを紐解いていく。涙腺崩壊必至。
恵を禪院家に売った理由
息子の恵が術式を持っていると感じていた甚爾は、術式の有無が確定次第、禪院家に恵を売る予定だった。「息子を売る」と聞くと、とんでもないクソ野郎というように思うが、実は甚爾なりに考えがあっての行動だった。
まず「術式があれば禪院家での扱いが良くなる」という考えが下地にあった。甚爾は元々禪院家の出身であるため、術式の有無での扱いの違いを肌で感じていた一人。これはそこを理解しての判断だろう。
そして「自分で育てるよりもマシ」という考えもあったはず。つまり、落ちぶれてしまった自分が育てるよりも、術式のある状態で禪院家に居た方が幸せだと判断した。
恵の母親が亡くなってから、どうでもいいと自暴自棄になっていながら、息子の将来だけはしっかり考えていた甚爾。それがこの男の素顔である。
恵の名前の由来が泣ける
恵という名前は甚爾が付けたもの。才能に恵まれた特級呪術師を倒した甚爾は、「恵まれた」という言葉から息子の名前を思い出す。
禪院家に呪力なしで生まれた「恵まれなかった自分とは違うように」という想いが込められている名前。作中の言動からは想像もつかないけれど、自決の理由と最期の言葉からも、甚爾がただのクズ野郎ではないことは伺える。
自決の理由と最期の言葉
自決の理由は、戦っている相手が息子だと気づいたから。息子のためを想い自ら命を絶った。甚爾は死に際に恵に姓を尋ねる。
答えは伏黒。禪院じゃないことに甚爾は安堵した。自分よりは禪院家に育てられた方が幸せだと考えつつも、「禪院家はクソ」という想いが甚爾の心中にはあったのだろう。
最期の言葉は「よかったな」。最期まで息子を想い、息子が禪院でないことに安堵し、恵の母親との「恵をお願いね」という約束を守った甚爾。実は息子想いに加えて、亡き人を想う心もあったのだ。
渋谷事変以降、禪院家のクズっぷりが続々と明らかになっていく中、こうした甚爾の家族想いな点は対象的に輝くものがある。
余談
オガミ婆の降霊術では肉体だけを降ろされたにも関わらず、魂まで上書きしてしまった甚爾。本来ならオガミ婆が死んだ時点で、肉体が滅びるまで暴走し続けるはずだった。しかし、天与の肉体の前には降霊術の理も意味をなさなかった。
最期までカッコいい生き様を見せてくれた伏黒甚爾。五条悟に息子を託したのも間違いではなかったと証明された。結果として五条悟が、禪院家に売られるのを止めたこと。最期の甚爾は感謝していただろう。
「今の禪院家が存在するのは甚爾の気まぐれ」という発言もあった。甚爾がその気になれば、禪院家の抹殺も容易いと恐れられていた。それを実現したのが禪院真希。本当に甚爾の気まぐれで禪院家が存在していたことが証明され、甚爾の株は益々上がることになる。