呪術廻戦 238話
五条悟を倒し、ほぼ完全体と成った宿儺。全盛期に使用していた呪具・神武解(かむとけ)を手に入れ、残すは飛天(ひてん)という槍の呪具を残すのみとなった。
五条悟の次に宿儺に挑んだ鹿紫雲一は、完全体宿儺の前に手も足も出ず敗北。次いで登場したのは、領域展開から出てきた秤金次・裏梅、そして虎杖悠仁と日車寛見。
4本の腕・4つの目・2つの口を持つ宿儺は、呪術師にとってこれ以上ない優位性を持つ。五条悟との戦いで得た「世界を断つ斬撃」で全盛期よりも強くなっている宿儺。さらには最強の領域展開も控えている中、宿儺を倒せる要素が全く見当たらない。
特に物理攻撃の戦いにおいては、宿儺の右に出る者はいないだろう。そんな中、今回は日車寛見の術式に注目したい。238話で登場した呪術師のうち、最も特殊な術式を持つ日車。彼の術式が鍵となるのは間違いない。
日車寛見(ひぐるま ひろみ)
羂索により術式を覚醒させられた死滅回游の泳者(プレイヤー)の一人。年齢は36歳。職業は弁護士。59期・盛岡修習を経て、岩手弁護士会に所属。T大法学部受験、法科大学院導入前の旧司法試験など、様々な難関試験をストレートで通過した天才。
三白眼とオールバックが特徴的。服装は黒のスーツに弁護士バッジという、スタンダードな弁護士スタイル。いつもは冷めた雰囲気を漂わせているが、強い正義感の持ち主。
正義の女神は法の下の平等のために目を塞ぎ、保身のためにあらゆることに目を瞑る人間が多い中、「縋りついてきた手を振り払わない様に、私だけは目を開けていたい」という信念を持つ。
日車寛見の能力
日車は天才。それは呪術にも及ぶ。術式の開花から、わずか12日間で1級術師レベルまで成長。領域がデフォルトで備わった術式を解明することで、結界術の基礎をも同時に習得。結界術から逆算する形で、呪力操作による強化術の勘を掴む。
類を見ない呪術の天才である日車は、死滅回游において数多くの呪霊を退け、20人以上の泳者を返り討ちにしている。そして全国の結界に2人しかいない100点保持者となった。
日車寛見の術式
領域がデフォルトで備わった特殊な術式。領域がなければ成立しない術式とも言える。最初に領域を展開し、相手を弱体化させた後に呪力強化による攻撃を加える。手に持つガベルは術式の発動や攻撃にも用いられる。術式の特性ゆえ、領域展開後でも術式が使えなくなることはない。
日車寛見の領域展開
誅伏賜死(ちゅうぶくしし)
周りにギロチン台が並ぶ領域。掌印は使用せず、式神『ジャッジマン』を召喚、領域を展開後にガベルを打ち鳴らすことで術式が発動する。術式の効果は「刑事裁判を簡易的に再現し、判決によって対象に罰を科す」というもの。ルールと流れは以下の通り。
ルール
- ジャッジマンは領域内の者の全てを知っている。
- ジャッジマンを裁判官とし、疑似的な刑事裁判を行う。
- 日車は検察官となり、相手は被告人となる(弁護士はいないため通常の裁判とは異なる)。
- 領域内では暴力行為が一切禁止される(言葉の暴力は許される)。
裁判の流れ
- ジャッジマンが今までに犯した被告人の罪状を一つ提示する。
- その罪状にかかわる証拠が入った封筒が日車に渡される。開封前でも日車は中身を把握できている状態。
- 被告人が罪状について陳述。黙秘・自白・否認(虚偽陳述を含む)のいずれかを行う。自白により認めた場合は④をスキップする。
- 日車が証拠を公表し反論を行う。そしてガベルを打ち鳴らすことで⑤に移行。
- ジャッジマンが二人の主張と六法に基づき判決を下す。有罪になれば内容に応じて被告人に罰(ペナルティ)が科される。
- 有罪を言い渡され罰を科された者は、罪を認めない限り2回まで裁判のやり直しを請求できる。ジャッジマンがこれを断ることはない。裁判の内容は前回と別の罪状で争われる。
判例
作中では虎杖悠仁の「未成年がパチンコ店に客として入店した疑い」について裁判が行われた。結果は有罪(ギルティ)。虎杖は「入店はしたが遊戯はしておらず、トイレを借りただけ」と虚偽の陳述を行った。
日車は持っていた証拠を基に反論。証拠は、虎杖がパチンコ店近くの換金所で景品を換金している様子の写真。虎杖は入店を認めており、換金の証拠もあることから、トイレを借りただけという陳述は信用に値しないと日車は反論。
結果、ジャッジマンにより虎杖悠仁は『建造物侵入罪』で有罪判決を下される。科された罰は『没収(コンフィスケイション)』。一時的に術式が使用不可となる罰。虎杖は術式を持たないため、呪力の使用不可に変更されている。
術式を持っている術師の場合、術式が使えないことにより、呪力操作にも支障をきたす模様。どちらにせよ、ほぼ生身の人間になってしまう。なお、日車は罰の内容は知らず、戦闘の状況から推察している。
虎杖は裁判のやり直しを請求。次の罪状について争われることになった。二審の罪状は「渋谷にて大量殺人を犯した疑い」。虎杖は「自分が殺した」と自白を選択。自白をしたことで日車の反論はスキップされ、即座に有罪判決が下された。
科された罰は『没収(コンフィスケイション)』を付加された『死刑(デス・ペナルティ)』。虎杖は呪力が使用不可となり、日車に『処刑人の剣(つるぎ)』が与えられる。処刑人の剣で斬られた者は、例外なく必ず死に至る。
日車は処刑人の剣で虎杖に迫るも、心に迷いがあった。証拠の封筒には宿儺の情報が入っており、虎杖は無罪だと確信していた。弁識能力と制御能力、いずれかが欠けていると心神喪失となる。あの時の虎杖がまさにそう。
過去の記憶を思い出し、初心に還った日車。目を閉じ術式を解除する。そこに虎杖の拳が炸裂。勝負は決した。
239話 日車寛見 vs 宿儺?
一番おもしろい展開は、日車寛見の領域に宿儺を引き入れること。裁判にさえかけてしまえば、あとは有罪を勝ち取るのみ。没収だけでも効果は大きい。宿儺の術式である斬撃を封じ、同時に呪力操作もままならなくなる。
そうすれば虎杖たちにも勝機はある。しかし、ここで出てくるのが炎の術式。通常、術式は一人につき一つ。しかし宿儺は、少なくとも二つの術式を持っている。
魔虚羅戦では領域展開後に炎の術式を使用していた。領域展開後は生得術式が焼き切れ、一時的に使用不可となる。なので炎の術式は、本来宿儺の術式ではないと言える。「■、開(フーガ)」と唱えることで使用可能になるため、どこからか取り出しているのだろう。
流れをまとめると、日車寛見の領域に宿儺を引き入れる。そして有罪判決を下し、少なくとも没収の罰を科す。術式を封じられた宿儺は虎杖と格闘。そこで宿儺は炎の術式を発動する。このような流れが予想できる。
宿儺の罪状
宿儺の罪状はどのようなものが考えられるか。虎杖の場合は一審が建造物侵入罪について、二審は大量殺人についてと、罪状に大きな開きがあった。「一審は軽い罪状」といったルールがあるのかどうかは不明。
宿儺に関しては、過去から今までにかなりの人を殺してきているだろう。それだけでも罪に問えるものはたくさんある。
いつの法律で裁くか問題もあるが、既に死滅回游で20人以上の泳者を屠ってきた日車。おそらくその中には過去の術師も含まれているため、過去の術師も現代の法律で裁いた可能性が高い。
よって今までの宿儺の罪を、現代の法律で裁く流れが妥当な線。宿儺が盗みや建造物侵入などの罪を犯すイメージはない。もしもあったら興醒めしてしまう。となると、やはり殺人についてでしょうか。人数次第で死刑判決を下せるか否か。
皆さんも宿儺の罪状について考えてみてください。コメント欄で意見をお待ちしております。
余談
今考察中の案件で、『宿儺の中にもう一人の魂がある説』を考えています。双子の片割れが宿儺の中にいる。宿儺は自身を「少なくとも忌み子」と呼んでいました。
忌み子とは、忌み嫌われる子の略称で、双子や障害を持った子など、周囲が望まない状態で生まれた子を指す差別用語です。双子は忌み子と考えられた時代もあり、宿儺はその事を言っているのだろうと推測できます。
宿儺の腕・目・口が常人の二倍あるのは、双子が一つになったから。術式が二つあるのは、内にもう一人いるから。内なる双子の術式を「■、開(フーガ)」により引き出している。
今回、日車の術式を紐解いていく中で思ったこと。「宿儺の内にもう一つの魂があることで、裁判にも影響が出るのではないか」。多重人格?魂を裁くことはできない?宿儺はそこを利用してくるかもしれない。
また、そのあたりを契機に、宿儺双子説もいよいよ明らかになってくるかもしれません。239話が待ち遠しい。他にも秤金次・裏梅の動きも気になるところ。次週に期待!