鬼滅の刃の最後のメッセージ
鬼滅の刃からの最後のメッセージ。この意味、分かる人はすぐに分かるかと思います。コミックス23巻の最後に追加で描き下ろされた、鬼滅の刃からの、そして作者の吾峠呼世晴先生からのメッセージ。僭越ながら、私が読ませていただきます。
生まれてくることができて幸福でした。
どうか笑顔を忘れないでください。あなたが泣いていると、悲しくてたまらなくなる。
後ろめたいなんて、そんなこと思わないで。
私たちがいたということを、覚えていてくれるだけでいい。共に戦い、共に笑った。兄弟のように、親子のように。
胸を張ってください。あなたと出会えたことが何よりの幸運。そして幸福だった。
あなたの存在が私を救い、孤独も全て蹴散らした。
あなたを想うとき、燃えるような力が体の奥から湧いてくるのです。
叶うことなら生きて傍にいたかった。みんなそう、一番の願いは。
でも、選ばなければなりませんでした。生きるか死ぬか、勝つか負けるか。
けれど、選べるだけまだ幸せです。本当につらいことは雪崩のように、一瞬で人を飲み込み何も選ばせてはくれない。
ただ守りたかった。自分の命よりもあなたの命が重かった。
幸せは長さではない。見て欲しい。私のこの幸せの深さを。
自分のことが不幸だなんて、思ったことは一度もない。
諦めず、逃げ出さず、信じ続け。
いつだって、その時自分にできる精一杯をやりました。
たくさんの強い想いが大きな大きな刃となり、敵を討った。
みんなの力です。誰一人欠けても勝てなかった。
生きていることはそれだけで奇跡。
あなたは尊い人です。
大切な人です。
精一杯生きてください。
最愛の仲間たちよ。
以上が、鬼滅の刃からの最後のメッセージです。このメッセージはとても深く、そして有難い意味が込められています。
まずは一つ。
キャラクター達に沿ったメッセージになっているということ。
一見キャラがしゃべっていないように見えて、実はそれぞれのキャラクターに合った文章となっている部分がある。
「生まれてくることができて幸福でした」
ここには炭治郎と禰豆子がいます。二人は家族を失い、どれだけ辛いことがあっても、決して不幸だなんて考えたことはないでしょう。生まれてきただけで幸福なのだと。
しのぶさんのコマでは、「どうか笑顔を忘れないでください」とあります。
ここはカナエの想いを引き継いで、笑顔を絶やさなかったしのぶさんを、そして「あなたが泣いてると悲しくてたまらなくなる」という部分は、まるでしのぶやカナエがカナヲに対して言っているような。そんな印象を受けました。
次の義勇のコマでは「後ろめたいなんて、そんなこと思わないで」とあります。これは義勇が最終選別のことに対し、後ろめたい気持ちがあった事と重なります。
悲鳴嶼行冥のコマでは「私たちがいたということを、覚えていてくれるだけでいい」とあります。優しい悲鳴嶼さんが言いそうな言葉です。
そして「共に戦い、共に笑った、兄弟のように、親子のように」ともあります。これは悲鳴嶼さんが過去に一緒に暮らしていた、寺の子供達を思わせます。
伊黒小芭内のコマでは「あなたと出会えたことが何よりの幸運、そして幸福だった」とあります。ここは蜜璃への想いが伝わってきます。
そして蜜璃のコマでは「あなたの存在が私を救い、孤独も全て蹴散らした」とあります。この言葉を見ると、二人の最期のシーンが目に浮かんできます。
伊黒小芭内は、死の間際こう言っていました。
「俺もすぐ死ぬだろう。君は独りじゃない」
まるで最後のメッセージと重なるような、この言葉。来世での約束をした二人は、最後に死という孤独から解放され、安心して逝くことができました。
そして煉獄さんのコマ。
「あなたを想うとき、燃えるような力が体の奥から湧いてくるのです」
これはまさに炭治郎が、いつも心の中で唱えていた「心を燃やせ」という言葉を象徴するもの。
炭治郎はこの言葉があったおかげで、集中力を極限まで高めることができ、最後まで戦うことができました。煉獄さんの言葉や強さがなければ、炭治郎は生きていなかったかもしれません。
そして次のコマ。
錆兎と真菰がいるコマでは「叶うことなら生きて傍にいたかった。みんなそう、一番の願いは」とあります。
これは、錆兎が義勇の傍にいたかったと、そういったメッセージのようにも思えますし、錆兎や真菰たちが鱗滝さんの傍にいたかったと、そういったようにもとれます。
そして次のコマでは、鬼殺隊士の後ろ姿があります。
「でも、選ばなければなりませんでした。生きるか死ぬか、勝つか負けるか」
この後ろ姿は、おそらく184話で犠牲になった隊士。無惨の攻撃に苦戦する柱を、体を張って守った隊士たち。柱を守る肉の壁になれと、みんな必死で柱や炭治郎たちを守りました。
この坊主頭の隊士は、炭治郎を守った隊士です。短髪の方も、184話で号令をかけていた隊士だと思います。
そして次のコマには、宇髄天元がいます。
「けれど、選べるだけまだ幸せです。本当に辛いことは雪崩のように、一瞬で人を飲み込み何も選ばせてくれない」
まさに、選べなかった宿命を持っていた天元。しかし最後は、三人の妻やお館様の助力もあり、自らの道を選び取ることができました。
そして、玄弥のコマ。
「ただ守りたかった。自分の命よりも、あなたの命が重かった」
これは兄を想う、玄弥の気持ち。兄の実弥と同じくらい、弟の玄弥も兄を守りたいと思っていた気持ちです。
そして無一郎のコマ。
「幸せは長さではない。見てほしい。私のこの幸せの深さを」
これはまさしく、無一郎のためにある言葉。無一郎は最後の有一郎との回想で、こう言っていました。
「僕は、幸せになる為に生まれてきたんだ」
辛いことや苦しいこともあったけど、幸せな瞬間も数えきれないほどあった。その瞬間のために生まれてきたのだと、無一郎は言いました。幸せの深さという言葉の深さに、とても考えさせられるものがあります。
次は実弥のコマ。
「自分のことが不幸だなんて、思ったことは一度もない」
この言葉と実弥。何だかしっくりくるような気がします。他のみんなもそうですが、誰一人として、俺は不幸だなんて考えていたキャラクターはいなかったような?
実弥も過去にいろいろあったけど、一度も不幸と思ったことがなかったなんて…そんなことを実弥が考えているのかと思うと、なんだかホッコリします。
そして次のコマでは、珠世と愈史郎がいます。
「諦めず、逃げ出さず、信じ続け」
この言葉も、まさに二人のためにあるような言葉。珠世は無惨を倒すため、あきらめずにずっと研究を続け、そして人間との協力からも逃げ出すことがなかった。そして無惨に対しても、身を挺して薬を打ち込みました。
「信じ続け」というのは、まるで愈史郎が珠世をずっと待ち続けていた、あの現代のシーンのような。珠世の生まれ変わりがいつか現れると、信じ続けている愈史郎のためにある言葉のようにも思えます。
そして次のコマからは、炭治郎の気持ちが語られていきます。
「いつだって、その時自分にできる精一杯をやりました」
炭治郎は最強の主人公というわけではなく、いつだってボロボロになりながら戦い、その度に大きく成長を遂げてきました。
累との戦い、煉獄杏寿郎が亡くなった悔しい戦い、痣を発現した上弦の陸との戦い、半天狗、無限城、無惨との最終決戦と、いつだって自分とは格上の相手と戦ってきました。安心できる戦いなど一度もなく、本当に精一杯やってきたと思います。
「たくさんの強い想いが大きな大きな刃となり、敵を討った」
これは、炭治郎や今の柱達だけのことではなく、縁壱や過去に鬼と戦ってきた柱も含めてのことです。
お館様も言っていました。
「永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり不滅なんだよ」
千年間鬼殺隊は無くならなかった。鬼殺隊の想いはずっと受け継がれ、千年もの間をかけて、徐々に徐々に力を増していった。そしてその想いが刃となり、鬼舞辻無惨を討つことになった。
「みんなの力のおかげです」
「誰一人欠けても勝てなかった」
これは本当にその通りで、誰か一人欠けていたら全てが終わっていたシーンというものが、鬼滅の刃にはたくさん存在します。
三郎がいなければ…
炭治郎がいなければ…
錆兎や真菰がいなければ…
縁壱がいなければ…
善逸・伊之助がいなければ…
柱がいなければ…
一人一人のキャラクターが、かけがえのない存在です。
そして最後のメッセージ。
「生きていることはそれだけで奇跡」
「あなたは尊い人です」
「大切な人です」
「精一杯生きてください」
「最愛の仲間たちよ」
これは炭治郎が言っているような、誰かが炭治郎に語り掛けているような。このあたりについて、裏のメッセージで考察してみたいと思います。
隠された裏メッセージ
表や裏というのは、僕が勝手に妄想しているだけです。このメッセージからは、感じるものが多い。僕がなぜか鬼滅の刃に出会い考察を始めたのも、ここにたどりつくためだったのではないかと、そうも思えてきます。
この鬼滅の刃23巻に特別に描き下ろされたメッセージには、ワニ先生こと吾峠呼世晴先生からの、特別なメッセージが込められていると僕は感じます。
特に今の時代。ウイルスが世界をひっくり返し、その反動でいろんな人が傷つき、この一年で自分で命を絶つ人が、すごく増えてしまいました。僕はこのメッセージが、そういった方に向けての発信のようにも思えるのです。
全体的にメッセージからは、生きることへのメッセージが強く感じられます。メッセージから読み取ったもの。僕なりに読み上げてみたいと思います。
生まれてきただけで幸福。
笑顔を忘れず、何も後ろめたいなんて考えることはない。
そんなことで悲しんでいるあなたを見たくない。
胸を張ってください。
あなたの存在や経験は、今後必ず誰かを救うことになる。
生きたくても生きられない人もたくさんいます。
生きているだけで奇跡なのです。
生きるか死ぬか、選ばなければならない時もあるかもしれない。
でも、選べることは幸せです。
その選択すらできない人もいます。
長いから幸せではない。
深いから幸せなんだ。
炭治郎たちが無惨を討ったように、その時できることを精一杯やっていってほしい。
でも無理はせず、時間がかかってもいい。
時には人を頼ってください。
あなたは尊い人。
あなたは大切な人。
精一杯生きてほしい。
最愛の仲間たちよ。
いや本当に、このメッセージからは当たり前のことなんだけど、生きるためのマインドが詰まっています。
しのぶさんを思い出すとき、笑顔を作り。
義勇を思い出すとき、後ろめたい気持ちを捨てよう。
悲鳴嶼さんを思い出すとき、鬼滅の刃でワクワクした気持ちを思い出そう。
小芭内と蜜璃を思い出すとき、人との出会い、自分のかけがえのなさを感じよう。
煉獄さんを思い出すとき、心を燃やそう。
錆兎や真菰を思い出すとき、生きたくても生きられなかった人の気持ちを考えよう。
鬼殺隊のみんなを思い出すとき、人のために動く気持ちを思い出そう。
天元を思い出すとき、選べる幸せを感じよう。
玄弥と実弥を思い出すとき、今まで以上に家族を大事にしよう。
無一郎を思い出すとき、幸せの感じ方を見つけよう。
珠世と愈史郎を思い出すとき、愛の深さに浸ってみよう。
そしてワニ先生のメッセージを思い出すとき、生きている奇跡、自分の尊さ、それを想ってくれている人がいるということ、それを思い出そう。
まとめ的なもの
このメッセージの僕なりの考察。ワニ先生が伝えたかったことかどうかは、本人にしか分かりません。でも、誰かのために、誰かの心を救おうと、そういった気持ちで書かれたメッセージなのではないでしょうか。
作中からも、ワニ先生の人柄はヒシヒシと伝わってきました。ワニ先生はすごく優しい方で、今の世の中に何かを伝えたいと思っていた人。
そしてこの最後のメッセージ。これを見ることによって、いつでもワニ先生という味方がいるんだなと、そうも感じることができます。
最愛の仲間というフレーズ。これはワニ先生が、僕たちに向けて言ってくれているような。ワニ先生と鬼滅の刃のキャラクターたちが、まるで自分に対してメッセージを残してくれたような。すごく感慨深いものです。
ということで、今回は鬼滅の刃23巻に描かれた、最後のメッセージについて考察してみました。みなさんは、このメッセージからどのような事を感じましたか?コメント欄で熱く語ってください。それでは今回はこのあたりで!