伊之助の涙。
この涙は、無惨に対する怒りと、仲間がやられたことに対する悲しみが、入り混じった涙です。
伊之助がここまで人の為に感情をあらわにし、人の為を想い戦おうとしているのは、初めての事なのではないでしょうか。
炭治郎と出会ったころは、同じ鬼殺隊の善逸をボコボコにしたり、炭治郎と力比べをしたり。
とにかく負けず嫌いで、仲間のなの字も知らなかったような伊之助です。
それが炭治郎たちと一緒に戦うようになってからは、段々と感情の変化・成長をしていきました。
杏寿郎の死に立ち会った際は、自分の無力さを痛感し、涙を流していました。
「死んだ者は土に還るだけ」
伊之助はその時そう言っていました。
でも今は、そんな簡単な言葉では済まされないほど、傷ついた仲間や死んでいった仲間のことを悼んでいます。
「返せよ。足も手も、命も全部返せ。それができないなら、百万回死んで償え!!」
伊之助は今、自分の無力さを悔しんでいるわけではなく、無惨が奪ったものを全て返せと、悲痛な叫びをあげています。
今回は仲間のことを口にしていましたが、伊之助の心の中には、琴葉の存在も大きくなっているはず。
童磨から真相を聞き、母親を想い涙を流していた伊之助。
琴葉は童磨に殺されたとはいえ、元はといえば元凶は無惨です。
無惨が鬼を生み出し、童磨を生み出したから、琴葉は殺されることとなった。
伊之助は「琴葉のことも返せ」と内心では思っているでしょう。
そして、それが叶わないことも理解している。
理解しているからこその、今の感情の爆発なのだと思います。
柱の犠牲
今回悲鳴嶼さんと義勇が、伊之助たちをかばったのだと判明しました。
そのため、悲鳴嶼さんは左足、義勇は右手を欠損することに。
このことについて、ネット上では少し物議をかもしています。
悲鳴嶼さんと義勇は、まず自分の安全を優先するべきだったのではないかと。
確かに、モブ隊士たちは柱がやられてはまずいと、自分の命を犠牲にしてきました。
「少しでも無惨と渡り合える剣士を守れ」
モブ隊士はそう言っていました。
これはごもっともです。
鬼殺隊最高戦力の柱が死んでしまっては、無惨に負ける可能性はグッと上がってしまいます。
なので、悲鳴嶼さんと義勇の判断は間違っている。
そう言われるのも無理はないでしょう。
しかし、私は悲鳴嶼さんと義勇が、他の判断をしたと考えました。
おそらく、悲鳴嶼さんと義勇が伊之助たちをかばわなければ、伊之助たちは死んでいたのではないかと。
それほど、伊之助たちが攻撃をまともに食らう状況だった。
なので悲鳴嶼さんと義勇は、自分が傷ついたとしても、伊之助たちを生かした方が戦力になるのではないかと考えた。
そして伊之助たちをかばい、自分たちは欠損。
悲鳴嶼さんに関しては、足をやられるという致命傷。
義勇に関しても利き腕をやられ、片腕の握力しか刀に込められないといった状況。
状況としては最悪ですが、守ってくれた柱に応えるように、伊之助たち若い戦力は今頑張っています。
このまま誰も死なずに、なんとか無惨を追いつめてほしい。
切にそう願います。