鬼滅の刃 上弦の陸
こんにちわ。漫画研究所です。今回の記事は「上弦の陸」についてです。
上弦の陸は、正確には2人います。堕姫と妓夫太郎、2人は兄弟です。
2人が登場したのは、コミックス9巻~11巻。
初めに登場したのは堕姫でした。
花魁
場所は吉原、遊郭。子供達はフワフワした感じで想像してほしいのですが、遊郭は男と女の夜の街。
今の時代では軽蔑の目を向けられるような街ですが、当時は「花魁」と呼ばれる特別な女性がいたそうです。
堕姫もその花魁として、遊郭の店に在籍していたようです。
名前は「蕨姫花魁」
蕨姫花魁こと堕姫は、人間のことを何とも思っておらず、在籍していた店では人間をいたぶり、虐め殺していました。
最終的にそのお店の女将さんも殺してしまいます。
女将のお三津のことは、年寄りだという理由で食べませんでした。
無惨の寵愛
お三津を殺したあと、無惨が堕姫の前に現れています。
このときは上弦が負けるということはまだなかったので、無惨も堕姫に対して優しい扱いをしています。
既に柱を7人倒している堕姫ですが、無惨は堕姫に更なる成長を期待していました。
「お前は誰より美しい」
「そして強い」
「特別な鬼だ」
無惨は女性の扱いが上手いようですね。
堕姫を寵愛しているように見せ、認めることで、自分の思い通りの活躍をするよう仕向けています。
飴と鞭
堕姫に刃向かった善逸が吹っ飛ばされるシーン。店の旦那さんが代わりに詫びを入れています。
そして堕姫は、土下座して謝る旦那さんを笑顔で許しています。
全員むやみやたらに殺してしまっては、潜伏に支障をきたすため、少しは理性というものも働かせているようです。
旦那さんは完全に堕姫に対して震え上がっているため、そこを見抜いてわざと優しくしているのかもしれません。
飴と鞭というやつですね。
鯉夏
堕姫と同じ花魁である鯉夏。鯉夏は、お嫁に行くため吉原を出ていく予定でした。
そこを見逃さない堕姫。鯉夏を捕らえて喰ってしまおうと考えます。
そこを炭治郎によって見つけられます。
堕姫がここで言ったのは「汚い年寄りと不細工は食べない」ということ。
綺麗な美魔女は食べるということですね笑
あとイケメン…笑
そして、炭治郎とのバトルが始まります。
開戦
炭治郎は、すぐに堕姫の能力を見抜きました。堕姫の能力は、帯の中に人間を取り込めるという能力。
帯が通れる隙間があれば、どこにでも入って行き人をさらえるというものです。
身体能力も高く、炭治郎と互角以上にやりあっています。
そして、炭治郎によって鯉夏を閉じ込めている帯を切り落とされてしまいました。
堕姫は炭治郎のことを「可愛いけど不細工」と言い「死にかけのネズミのようで愛着もわく」と言っています。
少し分かりにくいのですが、炭治郎のことは嫌いではないようですね。
それにしても今更なのですが、堕姫は紐パン…笑
炭治郎は水の呼吸から、ヒノカミ神楽の技に切り替え奮闘するも、堕姫にそれは通用しませんでした。
さすがに7人の柱を倒しているだけあって、身体能力もずば抜けています。
そして毒舌も発揮。炭治郎に対し「不細工は頑張っても不細工」と罵っています。
貯蔵庫
堕姫は、地下の食糧貯蔵庫に、帯に閉じ込めた人間を隠していました。
帯には意思を持たせることもできるようで、管理は帯自身に任せていたようです。
帯に閉じ込めた人間は生きたまま眠らせることができるようで、堕姫の能力は人間を貯蔵しておくのに最適な能力です。
伊之助が乗り込んで来た際は、伊之助をどうするか、帯が本体の堕姫に尋ねています。
そこで堕姫は、伊之助は美しいから捕らえろと言いました。
つまり、炭治郎は不細工、伊之助は美しい…。
そういえば善逸も「黄色い頭の醜いガキ」と言われていました…笑
なんとも毒舌…。
そして善逸・まきを・須磨も、貯蔵庫の帯から抜け出し、最後に天元が現れ帯を全て斬り落としました。
しかし、帯は無力化したのではなくバラバラになっただけで、穴から外に逃げ出してしまいました。
本体の堕姫を倒さない限り、帯が無力化するということはないようです。
そしてその抜け出した帯は堕姫に合流し、堕姫はパワーアップをしました。
パワーアップした堕姫は帯で辺りを切り刻み、その場を去ろうとしました。
しかし、そこに覚醒した炭治郎が立ちはだかります。
そして再び、堕姫と炭治郎の2人のバトルが始まりました。
記憶
炭治郎に斬りつけられ、足を負傷した堕姫。
迫り来る炭治郎に、無惨の記憶にあった「始まりの剣士」が重なります。
斬りかかってくる炭治郎に対し、堕姫は血鬼術「八重帯切り」を繰り出します。
しかし、炭治郎のヒノカミ神楽によって帯は斬られ、再生もうまくできない様子です。
そして、頸を斬られる寸前まで追い詰められますが、帯をしならせ斬撃を緩やかにすることで、それを回避しました。
その後堕姫は攻撃を仕掛けていきますが、覚醒した炭治郎にはそれが止まって見えるようでした。
結局堕姫は追い詰められ、またも頸を斬られる寸前、今度は炭治郎の体に限界がきました。
運良く助かった堕姫でしたが、今度はそこに禰豆子が現れました。
禰豆子は堕姫の頭を吹っ飛ばします。
対禰豆子
禰豆子は堕姫にとって、倒すべき相手でした。
無惨に探して始末するように頼まれていた相手。それが禰豆子でした。
ここでも無惨は、堕姫を手のひらで転がし「お前にしかできない」と持ち上げています。
堕姫にとってみれば、無惨に褒めてもらうため、禰豆子を始末したいところです。
しかし、怒りによって禰豆子も覚醒状態。上弦並みか、それ以上の回復速度を見せます。
堕姫が斬ったはずの禰豆子の手足は、瞬時に回復します。
そして、禰豆子の蹴り下ろした足が、堕姫の背中を貫通しました。
それでも堕姫は反撃し、帯で禰豆子を切り刻みます。
しかし、禰豆子は血で繋がった状態で体がバラバラになりません。
凄すぎる禰豆子…。
禰豆子の返り血を浴びた堕姫は、禰豆子の血鬼術により体が燃えます。
そして、暴走する禰豆子。途中で炭治郎が止めに入りますが、止まらない禰豆子。
堕姫は、禰豆子の炎により、なかなか傷が治りません。それでも炭治郎と禰豆子に襲いかかろうとする堕姫。
そこへ天元が現れます。
天元は、堕姫も気付かない間に、堕姫の頸を斬って落としていました。
そして堕姫は天元に「お前は上弦じゃない」と指摘されます。
異変
頸を落とされても、なかなか体が崩れない堕姫。堕姫は、子供のように泣き崩れます。
そんなとき、堕姫の背中から現れたのが妓夫太郎でした。堕姫は泣くことで妓夫太郎を呼んでいたようです。
妓夫太郎は堕姫の頸をつなげ、再生を促します。
この間に天元は攻撃を2度仕掛けていますが、1度目はかわされ、2度目は反撃を受けています。
ここで天元が手を抜いたとは考えにくいので、妓夫太郎の強さがうかがえます。
妓夫太郎
妓夫太郎の妓夫とは、遊郭の集金をする者の役職名のようです。
それがそのまま名前になったのは、妓夫太郎くらいだったとのことです。
天元バーサス妓夫太郎という場面ですが、堕姫は座ったまま愚痴をこぼしている状態。
妓夫太郎は血鬼術の「飛び血鎌」で天元を攻撃します。
そこには一般の人間もおり、天元はそれを守りながら戦います。
そして天元は一般の人間を逃がし、妓夫太郎と堕姫のいる部屋を爆破しました。
しかし、そこは堕姫の帯によって爆撃を防がれました。
激戦
妓夫太郎の鎌には猛毒が仕込まれており、それを食らった天元。
天元は毒が効かないと強がっていたものの、結局ジワジワと毒が効いてきています。
しかし天元は、妓夫太郎&堕姫の攻撃にもひるむことなく、再度堕姫の頸を斬ります。
天元は、妓夫太郎の頸は落とせなかったと悔しがっています。
それを聞いた妓夫太郎は、自分と堕姫の秘密を天元が知っていると悟ります。
そこに現れた天元の救援。伊之助・善逸、そして炭治郎です。
やはり天元は妓夫太郎と堕姫の秘密に気付いていたようで、2人同時に頸を斬ることで倒せると言いました。
余裕だという天元と伊之助。しかし「そんな簡単なことが今まで誰にもできなかった」と、妓夫太郎は言います。
そして、妓夫太郎が柱を15人、堕姫が7人の柱を喰ったことがあるとも言いました。
明らかに強い妓夫太郎ですが、柱を7人倒した堕姫よりも強い天元は、今までの柱よりも別格に強いとも言えます。
そしてここからは、戦闘は二手に分かれます。堕姫VS伊之助&善逸、妓夫太郎VS天元&炭治郎。
そして、堕姫には3つめの目が額に現れました。
これはどうやら妓夫太郎の目のようで、妓夫太郎は堕姫を操ることもできるようです。
そしてこの目は、妓夫太郎が「起きた」ことにより発動したもの。
この目があると、堕姫は動体視力がかなり向上するようです。
そしてここからが11巻。本当の激戦です。
大激戦
妓夫太郎の攻撃は、かまきりのようにグネグネしています。
天元も読めない太刀筋。これは伊之助に近いものがありますね。
天元の攻撃も妓夫太郎はうまくかわし、さらに堕姫の帯も操っているようで、炭治郎は防戦一方の状態です。
戦っているのは妓夫太郎と堕姫の帯。戦力的には1.5人分くらいはあるでしょう。
そして、ここで天元は、自分が毒を食らったせいで、早くカタをつけなければ全滅すると感じています。
もしここで、毒が回るのを待つような戦いを妓夫太郎がしていれば…、おそらく全員やられていたでしょう。
堕姫サイドも妓夫太郎と同じく、堕姫本体と妓夫太郎の血の刃という、1.5人分の戦力があります。
これによって、伊之助と善逸も防戦一方の状態です。
そこに現れた雛鶴。クナイを多数発射するカラクリで、妓夫太郎を攻撃します。隙をつき足を斬る天元。
ほとんどのクナイは妓夫太郎の血鬼術「跋狐跳梁」によって防がれました。
しかし一つだけ、クナイが妓夫太郎に刺さりました。
このクナイには藤の花の毒が塗ってあり、鬼を半日麻痺させることができるそうで、下弦の鬼にも効くものでした。
しかし上弦である妓夫太郎には、ほんの数秒しか効果がなかったようです。
クナイが刺さってから、天元と炭治郎が刀を振り切るまでの、ほんの数秒にも満たない時間しか効果がありませんでした。
そして、すぐさま妓夫太郎は血鬼術の「円斬旋回・飛び血鎌」を発動。
この技で危うく炭治郎がやられるところでしたが、天元が炭治郎を蹴り飛ばし、技を回避させます。
天元自身も、音の呼吸によって妓夫太郎の技を防ぎました。
しかし、妓夫太郎は一瞬で雛鶴の元へ飛び、雛鶴を捕まえます。天元は帯に邪魔をされて助けに行けない状態。
そこで雛鶴を助けたのは、限界ギリギリの炭治郎でした。
炭治郎がやられそうになったとき、天元も救援。
ようやく頸を斬れるかというところでしたが、妓夫太郎は簡単にその攻撃を防ぎました。
ただ、ここで妓夫太郎の頸を斬れたとしても、堕姫の頸も落とさなければ、2人の鬼は倒せません。
天元はさらにもうひとつの刀で攻撃を仕掛けますが、妓夫太郎は首を回してその攻撃を防ぎました。
何とも鬼らしい方法です。口で刀を掴むというのも、鬼の咬合力があるからこそできる芸当です。
妓夫太郎はここで再度「円斬旋回・飛び血鎌」を発動。天元を巻き込んで飛びます。
屋根に残された炭治郎は、堕姫との戦闘に巻き込まれていきます。
伊之助の無理矢理な作戦変更で、炭治郎も堕姫討伐に参戦。
炭治郎と善逸で堕姫の帯から伊之助を守り、伊之助は防御もせずに堕姫の元へ突っ走ります。
そして、二刀流ということを生かした違う角度からの攻撃と、ノコギリの要領で、伊之助は堕姫の頸を落とすことに成功。
そのまま首を捕まえて、体と繋がらないように持って逃げます。
そこに現れた妓夫太郎。伊之助の胸を突き刺し、伊之助は倒れます。
妓夫太郎が伊之助の元へ向かったということは、天元がやられた証拠。
地面に倒れている天元を確認し、絶望する炭治郎。
そこに堕姫の攻撃が、炭治郎に追い打ちをかけます。
一緒にいた善逸も、屋根の上から瓦礫に巻き込まれてしまいました。
そして、炭治郎は気を失ってしまいます。
最終局面
炭治郎が目を覚ましたとき、目の前にいたのは妓夫太郎でした。
ここで妓夫太郎の悪い癖が出てしまいます。それは、人間をいたぶり罵って快楽を覚えること。
この癖がなければ、妓夫太郎は勝てたでしょう。これが後々、無惨が言う言葉に繋がります。
そして、炭治郎は遊女の香り袋で匂いをごまかし、頭突きを当てた隙に妓夫太郎にクナイを刺します。
このクナイは、雛鶴を助けた際にコッソリ貰っていたようです。しかし、毒が効くのは一瞬。
その一瞬を狙って、炭治郎は妓夫太郎の頸を斬ろうとします。
そこに堕姫の邪魔が入ります。それを阻止したのは、瓦礫から復帰した善逸でした。
善逸は、一日2回しか使えないという神速を使い、瓦礫から抜け出してきました。
そして、残されたもう1回の神速で、堕姫の頸を斬りつけます。
堕姫、妓夫太郎、どちらも頸を落とされる寸前。しかし、一足早く妓夫太郎は毒から回復します。
「円斬旋回・飛び血鎌」を発動し、炭治郎を追い詰めます。
そこに現れたのは、倒れていたはずの天元でした。
なんと天元は、呼吸法で心臓の動きを止め、毒が回らないようにしていたようです。
心臓を止めれば血の巡りを止められる。毒の回りは防げますが、脳への損傷も怖いところですよね。
作中ではその辺りは触れていないので、おそらく大丈夫だとは思います。
天元は最後の力を振り絞り、妓夫太郎を追い詰めます。そこに飛びかかる炭治郎。
しかし、あごに鎌を食らってしまいます。
これで炭治郎も毒を食らってしまったので、あまり時間は残されていない状態となりました。
妓夫太郎の強さ
ここで、妓夫太郎の強さについて再確認するシーンがありました。
妓夫太郎の強さのポイントは、堕姫を操りながら戦えるという優れた戦闘感覚、そして毒です。
今回の戦闘でも、運が無ければ炭治郎達はやられていたと思います。
戦力的には妓夫太郎のほうが上であり、堕姫と妓夫太郎、2人の頸を斬らなければ倒せないという条件もあったからです。
妓夫太郎は炭治郎を殺すこともできたし、毒の時間稼ぎに堕姫を遠くへ逃がすこともできたでしょう。
しかし、妓夫太郎は炭治郎を甘く見過ぎました。そうしてそこが命取りとなり、ついに決着となります。
決着
決着の要因は、炭治郎の異変でした。毒の回り始めた炭治郎に、痣が発動したのです。
妓夫太郎も、頸を斬られることを認識します。
一方堕姫は、善逸に頸を落とされる寸前。しかし、周りの帯で善逸を攻撃しようと仕掛けます。
そこに現れたのは伊之助。伊之助は堕姫の帯を切り刻みます。それに驚く堕姫。
それもそのはず、伊之助は妓夫太郎によって、心臓のある胸を突き刺されていました。
死んでいたと思われる伊之助が復活してきたのです。
これもまた伊之助らしいのですが、なんと心臓の位置をずらして致命傷を回避したのだとか…。
妓夫太郎は不意を突いたように見えましたが、それでも一瞬で心臓をずらすとは、やはり伊之助はスゴイです。
そして伊之助は、善逸とは違う角度から、二本の刀を堕姫の頸に斬りつけます。
そして炭治郎・善逸・伊之助、3人の咆哮とともに、ついに決着がつきます。
ついに、堕姫と妓夫太郎、2人の頸を同時に斬ることに成功しました。
斬られた首は、並んで同じところに落ちます。
そして妓夫太郎の体が、死ぬ間際の飛び血鎌を発動しました。
矢琶羽のときもそうでしたが、体が崩れるまでは術を使うことができます。
無差別に放出した妓夫太郎の飛び血鎌により、辺りの屋敷は破壊されました。
兄妹
炭治郎が見つけた堕姫と妓夫太郎の首。2人は言い争いをしていました。
2人は、お互いの失敗を罵り合っています。
ヒートアップして理性を失っている堕姫は、言ってはいけない部分を言ってしまいます。
「全然似てない醜いあんたとは、血の繋がりはない。負けたら何の価値もない。出来損ないの醜い奴」
対する妓夫太郎も、言ってはいけないことを口にしようとします。
「出来損ないはお前だ。お前を庇ってきたことが、心底悔やまれる。お前なんか生まれてこなきゃ…」
そう言いかけたところで、炭治郎が止めに入ります。
「嘘だよ」
炭治郎は、妓夫太郎の言葉が嘘だと分かっていました。
「本当はそんなこと思ってないよ。全部嘘だよ」
妓夫太郎は、そこから黙ってしまいます。
どうして見透かされたのか、どうして人間が鬼にこんなことを言うのか。妓夫太郎は不思議に思ったことでしょう。
炭治郎はさらに続けます。
「仲良くしよう。この世でたった2人の兄妹なんだから」
炭治郎は、状況的には堕姫と妓夫太郎と同じ境遇です。
炭治郎と禰豆子も、たった二人の兄妹で今を生き抜いています。
炭治郎は禰豆子を想い、禰豆子は炭治郎を想う。どれだけ炭治郎が禰豆子の存在によって救われてきたか。
ここからの炭治郎の言葉は、本質を突いたすごくいい言葉だと思います。
「君たちのことは誰も許してくれない。味方してくれる人なんていない。だからせめて二人だけは、お互いを罵り合ったら駄目だ」
本当にこの通りですよね。犯してきた罪は、とても許されるものではありません。
2人に真の味方という者はいません。無惨だけは味方とも言えますが、それもただ利用されているだけ。
妓夫太郎も堕姫も、互いに真の味方と言えるのは、世界でただ1人だけ。
だからこそ2人だけは、お互いを罵り合わないでほしい。
炭治郎は本当に優しい男ですね。2人は死ぬことで、全てが無になります。
せめて最期くらいは、2人いがみ合うことなくこの世を去ってほしい。
人間で鬼殺隊でもある炭治郎の、最大限の優しさです。
回想
妓夫太郎と堕姫の回想は、他と比べて長い物だと感じました。
それだけに、2人に思い入れが強い方も多いのではないでしょうか。
妓夫太郎は頭が崩れる寸前に、堕姫の本当の名前を呼びました。
その名は「梅」
名前の由来は、病死した母親の病名からちなんだもの。これについては詳しく語りません。
梅が生まれる前、妓夫太郎は遊郭の最下層で生まれました。
夜の街というだけあって、子供ができてしまうのも、よくあることなのだろうと思います。
しかし、働けない子供は、貧困層には邪魔者でしかありませんでした。
そのため妓夫太郎は、生まれてくる前に殺されそうになったり、生まれてからも邪魔者と、何度も殺されそうになったそうです。
そして、周りの人間から罵詈雑言を浴びせられ育ちました。
思うのですが、妓夫太郎は、生まれた時は普通の姿だったのではないでしょうか。
しかし、実の母親に何度も殺されそうになったり、周りの人間に罵詈雑言を浴びせられ、今の姿に変化していったのではないかと。
人間の言葉にはそれほどの力があると、私は思います。
そんな妓夫太郎が変わったのは、梅が生まれてからでした。
妓夫太郎は自分がケンカに強いことを知り、醜さの利用価値を見いだしました。
そして、醜いと思っている自分にとって美しい梅は、誇りであり、劣等感を吹き飛ばしてくれている存在でした。
これも少し気持ちが分かります。
人に自慢できる存在が身内にいると、何だか自分まで、その人と同じ立場にいるような感覚になることがあります。
しかし、とある事件をきっかけに、2人の人生は大きく狂います。
梅が客の侍に、簪で目にケガを負わせ失明させてしまったのです。
その報復として梅は縛り上げられ、生きたまま焼かれました。
それは妓夫太郎をおびき出すためのエサでもありました。梅を抱きかかえ、叫ぶ妓夫太郎。
そこに梅が目を失明させた侍が現れます。妓夫太郎は侍に背中を斬られました。
侍の後ろには、妓夫太郎が取り立ての仕事をしていた店の女将と思われる人物。
梅の働いていた店の女将でもあります。
そして、女将の話から妓夫太郎は全てを悟り、女将と侍を鎌で殺しました。
しかし、妓夫太郎も背中に傷を負った状態で、出血により死にかけていました。
そんなとき現れたのが童磨です。
そして、妓夫太郎は鬼になることを選びます。他人の幸せを奪う取り立て屋の鬼として…。
真の悪
いかがでしょうか?
妓夫太郎は生まれながらに不幸を抱え、必死で生き延びてきました。
そして強くなり、梅が生まれてからは、梅も強く育てました。
その強さは遊女としてはメリットがない強さであり、侍を失明させ、梅は焼かれてしまいました。
妓夫太郎の教えは「奪われる前に奪え」
その教えがなければ、梅が侍を失明させることはなかったかもしれません。
しかし、ここで妓夫太郎ばかりを責めることもできません。ひどいのは、妓夫太郎が育った環境にいた人間。
妓夫太郎を殺そうとした親、罵詈雑言を浴びせた人間、梅を焼いた侍や妓夫太郎を売った女将。
侍だけは被害者になるのかもしれないですが、その後の報復は鬼の所行。
人間は鬼を狩ることを正義としていますが、そんな鬼を産んでいる張本人は、実は人間なのではないでしょうか。
これは私たちの世界でも言えるのかもしれません。
心残り
妓夫太郎は、本当に梅のことが誇らしく、大切な存在だったようです。
妓夫太郎の人生において、自身の死や鬼になったこと以上に、梅の人生を狂わせたことを後悔しているようです。
素直な梅を、もっと従順に、もっとおしとやかに育てていれば…。
そこを妓夫太郎は悔いています。
そして、最期の別れの時。妓夫太郎と梅は同じ場所にいました。堕姫は梅の頃の姿に戻っています。
妓夫太郎は、ついてくるなと梅を突き放します。そんな妓夫太郎に謝る梅。
さっき醜いと言ったのは嘘。自分が足を引っ張り負けたことに対し、悔しい思いがあったようです。
しかし、それでも突き放す妓夫太郎。
「俺はこっちに行くから、お前は明るいほうに行け」
ここにも、妓夫太郎の後悔の気持ちが隠れているように感じました。
また自分と同じ道を選ばせたら、梅が焼かれたときのような悲劇が起きるかもしれない。
もう自分と同じところにいさせたくない。梅は綺麗だから、もっと違う場所で輝いていてほしい。
そういう気持ちを感じました。しかし、梅はそれを拒みます。
「ずっと一緒にいる!何回生まれ変わっても、アタシはお兄ちゃんの妹になる!」
妓夫太郎の後悔は、徒労に終わったようです。
妓夫太郎がいかに梅の人生を後悔しようとも、梅の人生は梅のもの。
梅が納得してついてきているのだから、それは妓夫太郎が後悔するべきところではありません。
梅がここまで妓夫太郎を好いているのは、とある一つの会話があったからでした。
それはこの、妓夫太郎が言った言葉。
「俺たちは二人なら最強だ。約束する。ずっと一緒だ。絶対離れない」
この約束を、梅はずっと覚えていたようです。そして、それを思い出す妓夫太郎。
子供ながらに苦労をともにしてきた存在。ただの血のつながりだけではない絆。
そして二人は、一緒に闇に消えていきました。
まとめ的なもの
妓夫太郎と堕姫。どちらも魅力的で、最期の最期で泣かせてくれました。
後の無惨も語っていますが、人間らしい部分を多く残した鬼ほど早く死んでいく。
妓夫太郎には、梅という存在がそれにあたります。
どれだけ腐っても、兄妹の絆というのは完全に消えることはないのかもしれません。
それは禰豆子を見ていても分かります。
妓夫太郎が親に愛されていたら、梅が他の家に生まれていたら、色々な未来もあったと思います。
しかし、2人は意味があって兄妹に生まれてきました。
妓夫太郎を救うべく生まれてきた梅。妓夫太郎に守られなければ生きていけない梅。
また2人が生まれ変わったときは、幸せな家庭で、2人とも生まれてほしいと思います。
今回は2人分の紹介だったので、すごく長くなりました笑
でも、キャラを深く知れて、私は楽しかったです。
それではまた♪